【重要】学術講演等の準備における著作権上の注意点
※: 文中の太字+下線*部は、後半部に注釈の記載があります。あわせてご参照ください。
学会発表のスライド等を作成する際、過去の論文などに含まれる画像やテキストを再利用することがあります。そのような場合に注意すべき事項について述べます。
ここでは、著作権*1や許諾取得に関する一般的な事項のうち、特に重要と思われる点に絞ってごく手短に解説しています。詳細については、関連の文献や法令等を参照してください。また、個々の事例に関しては、記載内容を参考にしながら、自己の判断と責任において適切に対応してください。
論文のような著作物*2を再利用する場合、原則として、著作権者*1から再利用の許諾を取得する必要があります。利用しようとするコンテンツが著作物でない場合は、原則として許諾の取得は必要ありません。ただし、研究・調査データは客観的な事実又は事象であって思想又は感情が表現されたものではなく、著作物に該当しないものの、第三者による無断使用行為に対して法的な保護を受ける場合もあり得るので、著作物に準じた取り扱いをするのが安全です。
日本の著作権法では、著作権者の許諾なしで第三者のコンテンツを利用できる場合*3が示されています。
この中で、学術講演での利用に特に関連が深いのは、「引用」です。
適法な引用とみなされる場合には、著作権者の許諾を得ることなく、再利用することができますが、著作権法の規定や過去の判例から、以下のような要件を満たす必要があります。
- 引用する著作物が公表されている
- 公正な慣習に合致する
引用の必要性・必然性が一般に認められていること - 引用の目的上正当な範囲内で行なわれる
① 引用する著作物と引用される著作物とを明瞭に区別できること(明瞭区別性)
② 引用する著作物が主、引用される著作物が従の関係にあること(付従性) - 出所を明示する
また、著作者の意に反する改変を行わないことも条件になります。一方、趣旨に忠実に要約して引用することや、翻訳して引用することは認められています。
ただし、適法な引用と判断される基準は必ずしも明確とは言えません。
例えば、画像何点以下であれば大丈夫、などと判断することは困難です。したがって、第三者の著作物をむやみに利用することは避けるべきで、適法な引用かどうか判断に迷う場合は利用しない、あるいは著作権者の許諾を得てから利用すべきです。
学術論文を発行する多くの出版社や学会では、論文の画像や表、テキストの利用に関して、オンラインで簡単に許諾(permission)の申請できる場合が多くなっています。
個々の出版社/雑誌についての許諾の取得法については、該当するホームページなどで確認してください。
オープンアクセス(OA)とは、インターネット上で論文などの学術情報を無償で自由に利用できるようにすることで、閲覧だけでなく、自由な再利用もその定義に含めることが多くなっています。雑誌全体がオープンアクセスの場合と、オープンアクセス記事とクローズドアクセス記事が混在する場合があります。オープンアクセスとされる論文であっても、その再利用に関して完全に無条件というわけではなく、一定の条件が課せられる場合が多いので、注意して確認する必要があります。そのような条件に関する国際的なルールの1つにクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCL)*4があり、CCLのアイコンが明示されている論文では、その条件の範囲内で、比較的安心して図やテキストを再利用することができます。
【注釈】
*1. 著作者・著作権者とは
著作者とは、「著作物を創作する者をいう」(第二条)。著作者は、著作者人格権と著作権(財産権)を享有します。前者は著作者だけが持つ権利ですが、後者は譲渡や相続ができます。著作権者とは、著作権(財産権)を有する者です。
*2. 著作物とは
著作権法は著作物に関して、著作者の権利を定め、その公正な利用に留意しつつ、著作権者の権利を保護する法律です。ここで著作物とは、以下のように定義されています。
「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(第二条)
具体例として以下のようなものが挙げられています(第十条)。
- 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
- 音楽の著作物
- 舞踊又は無言劇の著作物
- 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
- 建築の著作物
- 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
- 映画の著作物
- 写真の著作物
- プログラムの著作物
以下のものは著作物とみなされず、著作権法による保護の対象外です。
- 事実それ自体 例えば新種の生物、DNAの配列のデータ、歴史的事実、など
- 思想やアイディアそれ自体 例えば発明、物理理論、など
ただしそれらを具体的に表現した論文は著作物となります。
*3. 第三者のコンテンツを著作権者の許諾なしで利用できる場合とは
- 著作物でない場合
- 権利の目的とならない著作物の場合(第十三条)
① 憲法その他の法令
② 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人、又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達など
③ 裁判所の判決、決定、命令及び審判など
④ ①~③の翻訳物及び編集物 - 著作権の保護期間が満了している場合
別段の定めがある場合を除き、著作者の死後七十年を経過するまでの間 - 著作権の制限規定が適用される場合
① 引用
② 私的使用のための複製
③ 付随対象著作物の利用
④ 検討の過程における利用
⑤ 著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用
⑥ 図書館等における複製等
⑦ 教科用図書等への掲載
⑧ 教科用図書代替教材への掲載等
等
*4. クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCL)とは
クリエイティブ・コモンズは、著作物の適正な再利用の促進を目的として、著作者が自らの著作物の再利用を許可するという意思表示を手軽に行えるようにするためのライセンスの普及を図る国際的プロジェクトおよびその運営主体である国際的非営利団体の名称です。非営利目的利用への限定や改変の禁止などのライセンスの条項の組み合わせにより、以下の6種類のライセンスが提供されていますが、その全てにおいて著作権者の表示が要求されています。コモンズ証によりCCLが明示されている論文では、その条件の範囲で、比較的安心して図やテキストを再利用することができます。
- CC-BY
作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求する - CC BY-NC
作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、非営利目的での利用に限定する - CC BY-ND
作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、いかなる改変も禁止する - CC BY-NC-ND
作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、非営利目的での利用に限定し、いかなる改変も禁止する - CC BY-SA
作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、作品を改変・変形・加工してできた作品についても、元になった作品と同じライセンスを継承させた上で頒布を認める - CC BY-NC-SA
作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、非営利目的での利用に限定し、作品を改変・変形・加工してできた作品についても、元になった作品と同じライセンスを継承させた上で頒布を認める
【参考資料】
著作権法:
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
国立情報学研究所先端ソフトウェア工学・国際研究センター 著作権法ガイドライン:
http://grace-center.jp/wp-content/uploads/2012/06/chosakuken_guide.pdf
文化庁 著作物が自由に使える場合:
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
Wikipedia(オープンアクセス):
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9
Wikipedia(クリエイティブ・コモンズ):
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%BA
【出版社・学会等の許諾取得情報に関するサイトの紹介】
Springer:
https://www.springer.com/gp/rights-permissions/obtaining-permissions/882
Elsevier:
https://www.elsevier.com/about/policies/copyright/permissions
RSNA:
https://www.rsna.org/journals/permissions-and-policies